『Matsutake』
鈴木颯人
『マツタケ 不確定な時代を生きる術』にはマツタケを中心とした多声性(ポリフォニー)についての記述があった。複合的な時間的リズムとアッセンブリッジの軌跡。複数のもの(自然だけでなく人間も)が関わり合い、互いに影響を与え、共生し、ポリフォニーが生まれる。それを実際に音にしていこうと思い、生まれて初めて作曲を行うことにした。
今回注意したのは統一性を崩すということ。音楽は元々統一されているものであるが、自然の中にあるマツタケを中心としたポリフォニーは、必ずも毎回同じようにマツタケが生えポリフォニーが生まれるわけではない。複数の事物、リズム、環境、様々なものが絡まり合った結果ポリフォニーがうまれる。したがって、統一された音楽を作らないように調を崩し、拍子とメロディーが合わないように崩し、リズムを崩し、楽器以外から発する音も入れているため、人によっては気持ち悪く感じる音楽であるかもしれない。
冒頭、マツ林の情景。当然、マツ林が形成されるにも必要なものがいくつかある。太陽、土壌、水、虫、そして人間。それぞれの視点から見た世界を表現するような旋律を書いている。また、楽器だけが音楽を奏でるわけではない。ありとあらゆる音が音楽を構成する要因になり、ポリフォニーの一員となる。風の音、鳥の鳴き声、楽器を演奏するための道具である松脂の音などを組み込んでいる。そして、様々なものが互いに影響し合い、ついにマツタケが発芽する。
マツ林の撹乱。無調。雷雨や土砂崩れ等の自然現象による撹乱だけでなく、人間の手による撹乱も行われる。一見マツ林が破壊されていくようにも感じられるが、撹乱は新たな自然、マツタケを生み出すために行われており、撹乱の中にマツタケの片鱗がある。
撹乱が終わり、新たな自然が形成される。風が吹き、光が差し込み、水が流れ、鳥や虫が出て、マツが生える。そして複数の条件、菌糸が絡まり合い、再びマツタケが顔を出す。前回よりも多く、しっかりとマツタケが生える。撹乱の結果、より豊かな自然が生まれ、マツタケを中心としたポリフォニーが形成されていく。
このように私は明確にそれぞれのメロディーに意味を込めているが、私が想起した意味をメロディーは必ずしも持っていなくてもよい。聴く人によって違った意味やストーリーを生み出していけたら、より多声的であると言えるだろう。聴くたびに中心となるメロディーが移り変わり、それぞれが影響しあった結果、メロディーは共生し、ポリフォニーとなっていることを感じてもらえたら幸いである。
